エンジニアこそ「カスタマーサクセス」を意識しよう

エンジニアは開発することが仕事だけれども、 開発するシステムは当然使う人がいる。
使う人のことを考えずに設計・実装してしまうと、使う人はシステムの利用にストレスを感じて使うのをやめてしまうかもしれない。使う人、すなわちユーザーのことを考えずにシステムを作ると誰も幸せにならないものができあがる。
作り手としてそれは避けたい。

ではユーザーにシステムを使い続けてもらうためにはどうしたらいいのだろうか。そのヒントになるかと思い『カスタマーサクセスとは何か』という本を読んでみた。

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本書によると、インターネットの発達した現代では前時代的な「モノの売り切りモデル」では成功できず、継続した利用が前提の「リテンションモデル」じゃないと成功できないようになったとのこと。
「モノの売り切りモデル」だと商品・サービスを売ってしまったらあとはおしまい。売る前(成約)にいたる前のマーケティング・サポートに全力を注げ、というモデルである。
「リテンションモデル」は成約後も継続的に利用してもらうことでLTVを最大化させるモデル。売った後も継続的に長く利用してもらう(リテンションしてもらう)ことにマーケティング・サポートに全力を注げ、というモデルである。
サブスクリプションのSaaSがいい例だ。

インターネットの発達でカスタマーはモノについての情報を手に入れやすくなった。売ったもの、売るものについての評判を誰にでもすぐ知ることができる。
売ってしまったらあとはおしまい、というモデルだとカスタマーはファンにならない。リテンションモデルでは、売ったあとカスタマーがサクセスするためにカスタマーに寄り添うモデルであるため、その質・体験がよければよいほどカスタマーはファンになる。ファンになることでLTVが最大化する。

ではカスタマーサクセスとは何か?
本書ではそれは「サザエさんの三河屋のサブちゃん」と説明している。 サブちゃんは御用聞きで足りなくなったであろうものを補充しに、ついでに新しい商品とか便利そうなものを提案しにくる。押し売りはしない。磯野家の成功(成功と書くとニュアンスがちょっと違うけど)のために動いてくれる。(たまに磯野家が変なもの買っちゃって一騒動っていう話もあったりするけど…まぁカスタマーサクセスとしておこう。)
要するに、カスタマーのことを考えてフォローをしっかりやろうということである。 デジタル時代だからこその「お得意さま」戦略である。

リテンションしてもらうために重要なことが2つあって、これは作り手であるエンジニアがやらなければいけないことである。それは

  • エフォートレス
  • WOWな体験

である。前者は簡単に言うとイライラさせない使用感を目指すこと。後者はすげぇと思わせること。 この2つが揃うとリテンションしやすくなるとのこと。
そうするためには、エンジニアであろうがカスタマーのことをよく知る必要がある。データの力でカスタマーの一人一人を知り尽くすことが大事。
そして、サクセスしないカスタマーに時間を費やさないことも必要で、プロダクトの目的とカスタマーの目的が一致しない場合はお互いが不幸になるため、ときには買ってもらわないという選択肢も必要。
ここで無理に売り切ってしまうと、ファンにならずそれが口コミで悪影響になるかもしれない。
LTVの最大化のためにはプロダクトの信念に沿わずカスタマーのサクセスを約束できそうになければ、そこに注力するなと本書にはあった。

エンジニアにとっては、WOWな体験の実装については花形の実装でもあるのでそこには気が回るが、エフォートレスについては気が回らないことが多い。
作り手であるため使い方を知っているので、ユーザーの気持ちにとって考えられなかったりする。そのためユーザーが使用にストレスを感じたりしてしまうことがある。
なのでどれだけユーザーの気持ちになって作れるか。ユーザーのことをもっと考えよう。

また、本書ではカスタマーサクセスは特定の部門・チームだけでなく全体がカスタマーサクセスを意識しないと成功しないとあった。そのため、組織文化にカスタマーサクセスを刷り込ませることが大事であり、組織自体を大胆にチェンジすることも必要であるとのこと。

一人一人がカスタマーサクセスを意識しないと、カスタマーに対するサポートがばらばらになってしまう。
そのためには普段からカスタマーが喜ぶものは何かを意識しなければならない。作り手であるなら尚更。
今ドキのエンジニアなら「カスタマーサクセス」を踏まえて開発できるようにならなければ!
エンジニアこそ「カスタマーサクセス」を意識しよう。